岩田松雄氏
interview

岩田松雄氏

元スターバックスコーヒージャパン代表取締役最高経営責任者。
リーダーシップ コンサルティング代表。
1982年に日産自動車入社。製造現場、セールスマンから財務に至るまで幅広く経験し、社内留学先のUCLAビジネススクールにて経営理論を学ぶ。帰国後は、外資系コンサルティング会社、日本コカ・コーラ ビバレッジサービス常務執行役員を経て、2000年(株)アトラスの代表取締役に就任。3期連続赤字企業を見事に再生させる。

【座右の銘】おもしろきこともなき世をおもしろく

Q.真剣にチャレンジすることになったきっかけは?

社会人になって初めて入った日産自動車で「社長を目指してがんばります!」と新入社員の挨拶をした。
その時は社長がどういうものか分かっていなかったけど、ただ男として高い志を持たないといけないと思っていた。
サラリーマンを続けるなら一番上は社長だと。
経営に興味はあったし、より具体的に経営者を意識したのはビジネススクールで学んでから。
日産自動車を辞めてコンサルをやって、そのあとアトラスというゲーム会社で社長をやった。
それまでコカ・コーラという世界的な会社にいたのを、三期連続赤字のベンチャー企業を社長として引き受けた。
もちろん日産自動車の社長にはなれなかったけど。
アトラスの社長を経験したから、そのあとザ・ボディーショップの社長をやり、そこでまた実績を上げたから、スターバックスという素晴らしい会社の社長をすることができた。
あきらめずに自分の夢を追い、それに対して努力を続けていくことが大事。

Q.業界を変えることに不安はなかった?

私はコンサルを2年経験した。コンサルタントは3ヶ月くらいで全く知らない業界の問題点や戦略を、相手の経営者レベルに対して提案する。
だから3ヶ月その業界について集中的に勉強したら何とかなる。
経営というのは業界越えても一番大切なのは「人」。
いい人を採用して、その人に気持よく働いてもらう。
また優秀な人材をいかに引き止めるか。
戦略やマーケティングももちろん大切なパートであるが、実際にオペレーションをやるのはお店の人や生産最前線の人達。
原理原則さえしっかり理解すれば、経営者はどの業界でもできる。

Q.成功の結果の原因は?

私は東京大学を出ているわけでもないし、頭が良いとは思わないけど、諦めないでずっと努力できたこと。
努力するという才能はあった。
ビジネススクールに行きたいと思って、2年ちょっとでTOEIC300点から900点まで上げた。
普通300点の時に900点は目指せないと思うけれど、自分を信じて諦めずに頑張った。
高校大学の野球部時代でもそうだったし、努力してなんとかなったという経験があった。
努力が続けられるというのは自分を信じているから、自分を信じてなければ努力はできない。
いくら努力しても900点とれないとか、試合には出れないとか、社長になれないと思っていたら誰も努力できない。
1%でも2%でも可能性があると自分を信じれるから努力できる。
だから自分を信じる気持ちはすごく大事。
うぬぼれてはいないし、自慢することではないが、自分の「運」っていうのは信じたほうがよい。
いずれ頑張れば何とかなると自分を信じているから、努力を継続できる。
自分を信じて努力を継続する。

Q.運が良かったと思う?

運が良いと思った人は運がよくなる。
自分はツイてると思ったらツイてくる。
自分は幸せだと思った人は、幸せになる。
自分は運が良いと思えるから、心の準備ができてチャンスが来たら掴める。
運が悪いと思っていたら、「どうせそんなことは上手く行かないよ」とか、「どうせそんなこと出来ないよ」とか、
目の前にチャンスがあっても掴めない。
これは脳科学的にも証明されていて
自分が運が良いと思っていると、良いホルモンが出てきて、ポジティブになって、結果的に本当に運がよくなる。
中野信子さんという脳科学者がちゃんと1冊本を書かれているくらい、私も読んで「なるほどな」と思った。
短期的には悲観的に、中長期的には楽観的に、このバランスがすごく大事。
「何とかなる」と思っても、努力しなければダメだと思うけど、
一方で今頑張らないと「何とかならない」という気持ちがあって、目の前のことを一所懸命やる。
一方で心のどこかで「何とかなる」んだという気持ちのバランス。

Q.これからチャレンジする人に一言

起業とか何かやろうと思った時に、何のために起業するののか?
自分の会社の存在意義、つまりミッションが大事。
もちろん金持ちになりたいとか、女性にモテたいというのも初めはいいと思う。
ただミッションと自分と会社(事業)を三位一体で成長させないといけない。
自分のためだけでは人は付いてこない。
世の中を良くしたいとか、みんなのために頑張りたいとなったら、人は共鳴して付いてくる。
いろんな人を巻き込んで大きな事業をしていこうとした時に、とても多くの人の協力が必要になってくる。
その時に単に「お金持ちになりたいから」、「女の子にもてたいから」では誰も付いてこない。
でも「こういう風に世の中に貢献したいんだ」って、「こういう不幸な人を助けたいんだ」という気持ちがあったら共鳴してみんな付いて来てくれる。
そういう会社(事業)の存在理由、ミッションを持って、自分のビジネスなり、何か新しいチャレンジをやってもらいたいと思う。
もちろん自分の欲望のためでもいいけれど、ただそれで留まっていたらダメだと思う。
私がアトラスの社長をやっている時にちょうどITバブルで、私のまわりの若い経営者たちが携帯ゲームとかで上場していた。
二桁の億円を手にした時に、ほとんどの人は消えていった。
自分がおいしいものを食べて、六本木に住んで、フェラーリに乗って、それで満足しちゃったわけですね。
でも結局残った人はその先の自分の志をさらに持ち続けた。
私は孫さんが一番に思い浮かびますけど、孫さん自身も最初は今の事業と全然違った事からはじめた。ソフトバンクはもともとパソコンソフトの卸屋さんだったのが、日本の将来の事を思って全然違う事業に参入した。
500年後1000年後の日本を考えた時にそれはやるべきだと。
稲盛和夫さんもまったく同じ。
「動機善なりや、私心なかりしか」とキャリアに参入した。
結果的にドコモ独占から競争のおかげで激的にコストが下がった。
私はソフトバンクを使ってますけど、昔の料金体系だと毎月100万円くらい請求されますよ。
でも今は1~2万円。
ようするに、競争のおかげでコストが100分の1になった。
世界で一番高いといわれた通信費があっという間に安くなった。
これは孫さんが500年後の日本のことを考えたから、そこには競争が必要だと考えてリスクをとって参入して来た。
孫さん自身は、一生使い切れないような何千億円という財産を個人的にお持ちだと思う。
でも個人資産を持つことが目的とは思っておらず、日本の将来を考えているから終わりがない。
志の高さをどれだけ持てるか。
自分のためじゃなく、より多くの人のために。
孫さんの場合は日本国民のためだし、かつ500年先っていうすごい話。